取引
気づいたら自室のベッドの上にいた。部屋の明かりは全くなく、エアコンすら点いてない。真っ暗の自室は静寂に包まれている。
「あれ?何故ウチにいるんだ? 」
いったいどうなってるんだ?
慌てて、携帯に手を伸ばす。
ディスプレイをみた瞬間、あっと声をあげそうになった。
携帯のディスプレイには日曜日、二十二時と表示されていた。金曜日から丸二日経っている。
混乱の渦に巻き込まれた。
なんとか金曜日からの記憶を思い出す必要がある。しかし、頭を働かせても全く思い出せない。
おもむろに立ち上がり、自室の中をウロウロウロウロして頭を抱えながら歩き回った。何かめぼしいメモでもないかと鞄の中を漁ったり、机の引き出しを開けたりだしたりした。
しかし、肝心の金曜日の情報は見つからなかった。そこでスケジュール帳を開き予定を確認した。
「そうだ、フリィップス氏と面談した、それは覚えてる。フリィップス氏との会話の内容が思い出せない。
何故だ?」
こんな時に身体全体から空腹欲求のサインが送られてきた。それもとてつもない食欲が。
「とりあえず腹ごしらえしよう」
カップ麺の包装紙を剥がし、熱湯を入れようとしたが、やかんが見当たらない。棚をいろいろと漁り探しまわっているその時、棚に思い切り頭をぶつけた。
「いってぇー」
次の瞬間、まるでフラッシュバックのように金曜日の面談を思い出した。それはまるでPCの電源がオンになるかのように。
「思い出した、私は取引をしたのだった」
そう、取引である。それはまさに悪魔の取引だ。
私は取引で、ある能力を手に入れた。ただし病気を処方されることと引き換えに……