ゆーすけのブログ

思いつき小説

現状

「水曜日はノー残業デー!なんという素晴らしきひびき!」

そう、今日は水曜日だ。

ウチの会社では運がいいことに水曜日はノー残業デーである。


個人的には金曜日の夜よりも水曜日の方が大事だ。だって中日はダレる。これがなかったら金曜までもたない。

 ウチの会社は港区にある機械メーカーだ。一応BtoBで手堅く稼いでる老舗中堅企業である。

  そこの法人営業を担当してる。仕事はそこそこ。稼ぎもそこそこ。

  大学新卒時にあの大変な就職活動をくぐり抜けなんとか潜りこんだ。 

  たまたま好景気だったこともあり、講義にもめったにでない留年スレスレの不良学生だったが、運良く入ることが出来た。

  新卒で入社し、今年で八年になる。

 人生逃げ切りタイプの私にはうってつけ。なんとなあく、ぼんやりとした社風が私にマッチしてる。


  九時十七時というわけにはいかないけれど、二十二時までには帰れる。

  帰ったら私の至高の時間、ネットサーフィンやりながらダラダラダラダラ。


  これでいいんだ。まさに王道スタイル。お布団万歳、スウェット万歳、ビール万歳である。

  独身男の一人暮らし、笑うんなら笑ってくれ。

  なんとなあく先延ばし、考えてるのは今日が早く終わること。つまり生きるってこういうことだろ?

 



 貴重な水曜日が終わり、憂鬱な木曜日がやってくる。


 乗車率二百パーセントの田園都市線に乗り、渋谷から銀座線へ、新橋まで憂鬱な密室。考えてるのは今日の布団のこと。それとルート営業も少し。


「先輩!おはようございます!」

「ああ、おはよう、いつも元気だなー。」


  この至って元気のいい私の後輩、自分と真逆にいるから何かと気が合う。自分にもってないもの持ってるからかもしれない。とにかく気を使って何でも話してくれる。いいやつには違いない。


「そういえば昨日課長が先輩探してましたよ、先輩が帰ったあとに尋ねてきました。」

「課長が?何だろう?要件は聞いてないよね?」

「聞いてませんよ。直接確認したらどうですか?」

「うん、そうだね…」


  この時頭を巡っていたのは、めんどくさい。またよくわからない新規事業を任せられるのだろうか、もしくはダメだしだろうか。とにかく憂鬱にうなだれそうになりながらも課長に聞かなければと一応理性を働かせる。


「あるパーティに行ってこい、そしてこの人物に近づけ」


ああ、なるほど、営業ですか。


「何故私にいかせるんですか?ウチにはエースがいるじゃないですか?」


「ん、ああ、それはだな、えーと」


  要するにエースはこの仕事やる暇がないと、で、暇そうな私に巡って来たとそういうことだ。

 課長から渡されたファイルを押し戻し断われたらどんなに楽か、この時ばかりはサラリーマンの宿命を呪った。